モンブラニストの皆さん、こんにちは!密かにずっと温めていた企画『パティシエインタビューシリーズ』がいよいよ始まります。新進気鋭のパティシエの方や業界重鎮のパティシエの方など、いろんな方にモンブランのことはもちろん、いろいろ根掘り葉掘り聞いちゃいます。
記念すべき第1回目は、東松原にあるパティスリーショコラトリーレシィの寺﨑シェフです。寺﨑シェフの作るモンブランはその名も「モンブラン・エフェメール」。エフェメールとは、フランス語で「儚い」という意味なんですが、その名の通り注文してから60分以内に食べることを推奨されています。それもそのはず、特注の生クリームを使ってたっぷりのクレームシャンティがモンブランの中心にあり、本当に繊細なんです。
そんなモンブランを作られてる寺﨑シェフ。どんな思いでこのモンブランを作られているのか?リスペクトしているパティシエはいらっしゃるのか?など、色々聞いてみましたのでぜひご一読ください!

寺﨑シェフ(以降「寺﨑」):この間は協会のホームページに記事をアップしていただきありがとうございました。
日本モンブラン協会(以降「協会」):見ていただけましたか? ありがとうございます。本当に美味しいモンブランでした。
寺﨑: ありがとうございます。
特殊製法で作られたシャンティー
協会:特に和三盆を使ったクレームシャンティーがすごく特徴的で、あそこまで濃厚なのはあんまりないなと思いました。
寺﨑: そうですね。お店を出す前に色々な形でモンブランを試作する中で、様々な生クリームを使ってみたのですが、たまたま僕がお店を出す少し前に、森永乳業さんが新製品として出した生クリームがあって。
協会:脱気製法で作られたやつですよね?
寺﨑:はい、脱気製法で作られたものです。「最近このような商品が出たのでどうですか?」みたいな感じで。それで森永乳業さんのラボにお伺いして色々生クリームを試食する中で、僕がイメージするモンブラン、例えば栗とのバランスや、メレンゲなどとの相性とかが良さそうで、そして口溶けもあって「あ、これすごくいいな」と思って実際にモンブランに使わせていただきました。(乳脂肪の)パーセンテージとしては41パーセントかな。結構高脂肪な感じではあるんですが、でも食べてみるとそんなに重いなっていう印象じゃなくて、すごく軽く食べられる製法で。そういう形で生クリーム選定をして使わせてもらっています。
ちょうど今(栗ペーストを)絞っていましたけど、やっぱりライブ感とかも大事にしているので、お寿司じゃないですけど、 ご注文が入ってから絞るようにしていて。もちろん味への 影響もあるので。 ショーケースに並べておくと、香りとかも飛んでしまいますし。
協会:そうですよね。 やはり乾燥しやすいですもんね、モンブランは特に。
寺﨑:ショーケース内でのマロンクリームの乾燥などを考えると、余分なものを足したりとかもしなくてはいけないので。メレンゲをチョコレートでコーティングしてたりとか、カカオバターを塗ったりとかが多いですが、。雑味って言ってしまったらあれですけど。自分の理想とするモンブランには必要ない部分なのかなと。
素材へのこだわり
協会:色んな記事も拝見して、すごく、シェフが素材にこだわられてるなと思ったんですよ。
寺﨑:そうですね。
協会:言ってしまえば素材にはそこまでこだわってない、マーケティング重視のお店とかもあるじゃないですか?そんなお店も多い中で、素材にこだわられてる、その根っこの部分って何かあるんですか?ご自身の背景を振り返ってみて。
寺﨑:どうなんでしょう?幼少期の食体験としては、僕の叔父が和食の料理人をやっていて昔から家でフグをさばいてもらったりとか。
協会:そうなんですね!奇遇ですが、僕の親父もフグの免許持ってました!
寺﨑:そうなんですね。フグ鍋とか、アンコウ鍋とか、昔から色々と良い物を食べさせてもらっていて、幼少期の食体験なども、やっぱり舌には影響してるのかもしれません。
協会:はい。
寺﨑:あとはやはり物価が高くなっているというのがあるので、値段相応のものをしっかりお客様に出したいというのがありますね。(物価高を背景にして)お客様も目が肥えてくると思うので、同じ1000円を出すなら、やはり美味しい物を食べたいじゃないですか。お客様に誠実に、1000円出すんだったら、いい素材をちゃんと使ってっていうところで考えながら作っていますね。
小説家を目指されていた過去
協会:ところで、他のインタビューを拝見して、シェフが色んなことを言語化されてらっしゃるなと思ったんですよ。それってやっぱり、小さい頃小説家を目指されてたことが影響されてますか?寺﨑:影響はあるんじゃないですかね。元々自分の中にある言葉とかをモノにするような職業を目指していたので。
協会:記事には幼少期から目指されてたって書いてあったんですが、すごいですよね。あんまり小さい頃小説家やりたいって思う人ってそんなにいないのかな?と思って。小さい頃から成熟されてたんですね。
寺﨑:親からゲームよりは本みたいな感じで与えられていたので、色々な本を読んだりはしていて、その部分もあって。 結局、高校ぐらいで小説家は諦めましたけど。高校卒業間際に諦めて、その後・・・
協会:栄太郎さんに行かれた。
寺﨑:よくご存知で笑。宮城県で生ドラ焼きとかメインで作ってらっしゃるところですね。
協会:日本橋にある栄太郎さんとは全く別なんですかね?
寺﨑:違うみたいですよ。 僕もその頃、全くお菓子の知識がなかったので、東京に来て初めて榮太郎という和菓子屋がある事をを知ったんですけど。和菓子屋につけがちな名前なのかな笑。
協会:小説家を目指されてた頃はどんな小説を書かれたんですか?
寺﨑:ミステリー寄りですね。純文とかも書きましたけど。 ミステリー系は毎年、『このミス』で見てますけど、米澤穂信さんとかが好きです。最近純文は追ってないんですよね。
協会:今でも本読まれるんですかね?
寺﨑:結構。やっぱり、量は減っちゃいましたけどね。
協会:お忙しいですもんね。 必ずこの人が出たら読まれるとかいう本ってありますか?
寺﨑:米澤穂信さんは見てますね。
協会:ちっちゃい頃、なぜ小説家を目指そうと思ったんですか?
寺﨑:うーん笑。なんだろうな・・・古くは、怪盗ルパン、ルパン三世とかじゃなくて、かいけつゾロリとか。漫画チックですけど笑。江戸川乱歩とか読んではいましたね。芥川とか太宰とかも好きでした。その辺は通ってきましたね。
協会:ということは細かいトリックものというよりも、元々はルパンとかそっちを読んでて・・・。
寺﨑:そうですね、それから自分で書いていくうちにそっちに流れていきましたね。青春物とかも書いてみたりもしましたけど。
協会:何歳ぐらいから書いてたんですか?
寺﨑:中一とかですかね、確か。小学校の時はまだ読むだけだった気がしますね。図書館には良く行ってましたけど。一日中図書館に行ったりとか。
協会:原稿用紙とかで書いてました?。
寺﨑:その頃にはワープロがあったので笑。 家にワープロがあったので、ワープロで書いてました。
協会:中一というのはすっごく早いと思います。
寺﨑:まあ、そうですね。まあ、書くのは遅いですけどね。遅筆なんです笑。
協会:今も全然書かれたりはしてないんですか?
寺﨑:いや、今はやってないですね。昔はね、自分の中に表現したいものが一杯あって、それを文章にしてましたけど、今はこのお店がベースにあるんで、そこで発散しちゃってるかもしれないんですけど。 でも思いはありますけどね。
小説とケーキの関係
協会:ご自身が昔小説家目指されてたみたいなのをあえて言われてるような方ってあんまりいらっしゃらないのかなと思って。
寺﨑:そこは言ってしまうとブランディングというか。他の方にはない要素だし、この時代お菓子屋さんもたくさんあるので、色々ことを考えたりとか、もうちょっと売り出して行こうかなと。
協会:なるほど、あえて出されてる。
寺﨑:まあ、お店の名前にも、これを使おうと決めてたので。
協会:『物語』という(注:店名の『レシィ』とはフランス語で「物語」の意味)。
寺﨑: そこに至るストーリーというか、 流れが必要なので。
協会:なるほどですね。ああいう、本のコレクションをされてるのも・・・。
寺﨑:そうですね。 あと100年ぐらいいろんな人の手を渡ってきたものを海外オークションとかで競り落としたりとか。
協会:すごいですね。
寺﨑:(展示されている本を指して)『ピーターパン』と『 不思議のアリス』。 これに関しては表紙の絵がアーサー・ラッカムっていう方のものを今まとめて出してます。
協会:新しいケーキを作る時って、文学作品がインスピレーション源になったりするんですか?
寺﨑:そうですね。名前につけてるものもありますし。「ラヴィ」とかは『不思議の国のアリス』のホワイトラビット、白うさぎから取ったりとか。それから「ガラテア」に関しては、1年半ぐらい前に出したマリオンっていうチーズケーキがあるんですけど、それと対になっていて。ギリシャ神話で『ピグマリオン』って物語があるんですけど、その中でピグマリオンが恋をしたガラテアという女性がいるんですね。そういうイメージで作りました。
協会:(ショーケースを見ながら)どのケーキですか?
寺﨑:ちょっと黄色いやつです。
協会:上に胡椒が乗ってるやつですね。 美しいですね・・・
寺﨑:(お客様が来店されて)いらっしゃいませ。 はい。こんな感じで、作ったりしてます。
リスペクトしてるシェフとパティシエ
協会:ベンチマークされてる、この人いいなって思われてるシェフとかパティシエとかお店はありますか?
寺﨑:お店をやってない人が多いですね。フリーで活動していたりとか。どこかのチョコレートメーカーの監修をやっていたりとか、そういう人が多いんですよね。フォーシーズンズホテルの青木シェフという方が好きで、雑誌などで尊敬する方はと聞かれたらそうお話しはしてるんですが、実はお店出してないのでどこで召し上がってくださいってことが言えないんですけど。
協会:そうなんですね。
寺﨑:あとは豪徳寺にある『イクアリー』っていうクレープ屋さんとか。 あとは定番になっちゃうんですけど、『パリセヴェイユ』の金子さんとか。 何を食べても美味しいですからね・・・。
協会:ケーキに限らず色々食べに行かれたりするんですか?
寺﨑:ええ、最近は忙しくて減ってしまいましたけど。レストランとか昔は回ったりして、そこから着想を得たものもあったりもして。例えばボンボンショコラだったら「日向夏x紫蘇」っていうのがあるんですけど、それは日本橋の、えっと、兜町にあるパティスリーの・・・。
協会:『ティール』もしくは『イーズ』?
寺﨑:そうそう。イーズ!そこの大山さんがもともとパティシエやってた『シンシア』というレストランが青山にあって、鯛焼きのスペシャリテが有名なんですけど。そこで食べたシソと日向夏のデザートがすごく美味しかったので、それを自分流にボンボンショコラに落とし込むことをやってみたりとか。なかなか時間がないんですけど、インプットが大事なので、アウトプットするには。
協会:協会でも昨日実は赤坂の『リベルターブル』って言うお店に行ってきまして。そこのシェフパティシエの森田さんがケーキだけじゃなくてお昼にフレンチのコースを出されてるんです。パティシエの作る料理を極めようとされてて。例えば、マドレーヌの上にほうれん草とか乗って出てくるんです。すごく面白かったんですよね。
寺﨑:2時間ぐらいのコースですか?
協会:はい、2時間ぐらいですね。ライブキッチンで、目の前で作ってるんですよ。
寺﨑:なんか見たかも? こういうU字型の?
協会:はい、そうです!馬蹄形の。
寺﨑:そうですよね、いろんなことやってらっしゃるシェフもいらっしゃって。 京都の方にお菓子屋さんが出てレストランを回ってるとか、古くは下高井戸の『ノリエット』の永井さんとか。そういうことをやることで味の面では繋がってくることもあると思いますね。
協会:でもこの辺りだったら、スペースもどこかに作れそうですよね。
寺﨑:なかなか・・・。空けばいいんですけどね。
協会:離れみたいな感じで。
寺﨑:そうですね。スペースがあればカフェとかもやりたいんですけどね。
協会:そうですよね。特にモンブランの推奨賞味期限が短いので、家まで1時間半かかるから諦めるみたいな人も中にはいるかもしれませんよね。
寺﨑:そうですね。モンブランは30分から60分以内に召し上がっていただくことをお願いしてますからね。全くダメってわけではないのですが、 やはりメレンゲを防水加工してないので、どうしても上の生クリームの水分とかが移行して柔らかくなってしまったりとか、栗の香りも飛んでしまいますし。ベストな状態でお召し上がいただくという意味で、そういうお勧めはしてるんですよね。
協会:僕も運ぶのに40分ぐらいかかったんですけど、クレームシャンティーが柔らか目だから、結構ムニューってなっちゃいますよね。
寺﨑:はい、なっちゃいますね。
協会:だから持ち帰る時は気をつけて運ばないとですね。今度はなるべく買ってからすぐいただきます。では最後に。ご自身のケーキ以外でここのケーキ食べろ、もしくはここのモンブラン食べろみたいなところはありますか?
寺﨑:『パリセヴェイユ』はみんな行っちゃうからなぁ笑。 本当に『パリセヴェイユ』の「ムッシュアルノー」というケーキは、色々なパティシエの人生を変えるレベルの美味しさだと思ってるんですけど。でもみんなそう言ってるからなぁ。誰も言ってないやつだと、友達にはなっちゃうんですけど、中野坂上に『ロンポワン』っていうショコラトリーがあるんですけど、バーもやってて。隠し扉の奥にバーがあったりするんで。
協会:へー!
寺﨑:結構その辺は面白いなと思いますね。モンブランも美味しいので。うちと同じようなシンプルな感じなんですけど、メレンゲ、生クリーム、無糖のシャンティ、栗ペーストで。そしてチョコもすごく美味しくて、パフェもやってて。すごく面白い形態でやってらっしゃるので。
協会:なるほどですね。そこは中で食べれる?
寺﨑:そうですね。今は予約制かな?いきなり行って食べられるわけではない感じなんですけど。
協会:じゃ、ちょっとそこ行ってみます。
寺﨑:その辺は一杯あるんで。『ロンポワン』っていうお店があったら、大通りの同じ向かい側に『プレファレンス』ですよね。そして最近『MORI YOSHIDA』さんが出されたりもしてるので、中野あたりはすごく面白い地域だと思うんですよね。
協会:なるほど。 ではそこにも行ってみたいと思います。
寺﨑:はい、ぜひお願いします。
故郷への想い
協会:ご出身が宮城ということで。
寺﨑:はい、そうですね。
協会:やっぱりきれいな空気とか、きれいな水とか、そういう美味しいご飯とか、素材とかが多くある場所なのかなと思って。その中で、シェフの舌が育ち、今があるという気がしたんです。故郷への想いというとちょっと大げさなんですけど、何か例えば将来的に地元と関わりを持つというようなアイデアはありますか?
寺﨑:そうですね。色々やらせていただきたいですね。小学校の同級生が今地元の農協で働いているので色々とお話させてもらってはいるんですけど。今使ってる塩は全部宮城県の藻塩なので。いちごが難しいんですよね。いちごは栃木がメインだと思うんですが、宮城はなんか糖度が乗らないんですよね。ニコニコベリーとかいろんな品種を出されてはいるんですけど。有名どころで言うと、最近「ミガキイチゴ」ってのがあって、あれはちょっと値段がなかなか普段使いにはしづらいんですけど。いずれやりたいんですよね。地元の製菓学校とかからも講習をお願いしますみたいなお話もあるんですが、今は離れられないので。話はしたいですね。
協会:そういう繋がりが出来ていくと、すごく良いですよね。
寺﨑:農作物より海産物が多いんですよね。
協会:美味しい海産物ががたくさんありますよね。
寺﨑:そうですね。農作物もあるんですけどね、利府っていうところがあって、和梨が有名だったりとか。大きいイチゴ農園もありますし。
協会:どうしても海産物のイメージが強いですね。 例えば、海藻を使ったケーキとか。
寺﨑:今ね、色々ありますよ。シーベジタブルとかもはやり始めてるんで。その辺の加工とかもやってもらえたらいいんですけどね。
協会:面白いですね。
寺﨑:なんか、地元では海苔アイスとか作ったりとかしてるんですけど。いいアイデアがあるといいなとは思います。
協会: お忙しい中お時間をいただきありがとうございました。

